目次
  1. リニューアル費用は残すページと移す機能で変わる
  2. 見積もり前に既存サイトを棚卸しする
  3. 移行費と制作費を分けて比較する
  4. 削る費用と残すべき確認作業を区別する
  5. 予算相談には移行対象の一覧を添える
  6. 移行範囲が決まればリニューアル費用の差を説明できる

既存のホームページを作り直すために、2社から見積もりを取った。どちらも似たようなデザインの提案なのに、金額には大きな開きがある。社内で予算を申請するには、その差がどこから来ているのかを説明しなければならない。

この差は、見た目の作り込みよりも「既存サイトから何を残し、何を新しいサイトへ移し、何を終わらせるか」という範囲から生まれることがあります。新しく作るページの数が同じでも、移す記事や画像、URLの転送、フォームの引き継ぎの量が違えば、見積もりは変わります。

この記事では、新規制作ではなくリニューアルに固有の「移行」と「終了」の作業に絞って、見積もりを取る前に数えておく項目と、初期費用・追加が発生する条件・継続費用を分けて比べるための表を示します。記事中の表と記入例は、EQUAL DESIGNが見積もりの比較用に整理したもので、金額の目安や効果を示すものではありません。

リニューアル費用は残すページと移す機能で変わる

部分改修と2種類の作り直しを並べ右へ行くほど移行の作業が増えることを示す図
部分改修と2種類の作り直しを並べ右へ行くほど移行の作業が増えることを示す図

同じ規模に見えるリニューアルで費用が違う理由の1つは、各社が見積もりの前提にしている範囲の違いです。まず、自社の案件がどの範囲に当たるのかを決めてから見積もりを比べます。

制作会社の解説でも、単なる見た目の刷新なのか、サイトの設計から見直すのかで、必要な工数と金額が変わると整理されています(ferret One)。また、見積書に入るべき項目として「既存サイトからの移行作業(ページ移行、リダイレクト設定、URL整理)」を挙げ、既存サイトの移行量が想定を超えると追加費用が発生しやすいと説明する記事もあります(クロスデザイナー)。

移行の量で分けると、リニューアルはおおよそ次の3つに分かれます。なお、この記事の表に出てくるCMSはホームページの文章や画像を管理画面から更新する仕組みのこと、ドメインはURLの中でホームページの住所にあたる名前の部分のことです。

範囲既存ページURLCMS・機能見積もりに入る主な作業差が出やすい点
部分改修大半をそのまま使う変えない変えない対象ページのデザインと実装触らないページとの見た目やリンクのつながり
作り直し(URLは保つ)作り直して同じURLで公開する原則として変えない変える場合がある構成・デザイン・実装・記事の載せ替え載せ替える記事やお知らせの件数
作り直し(URLも変える)残す・まとめる・削除を決める変わる変わることが多い上の作業に加え、旧URLと新URLの対応表・転送・公開後の確認URLの件数と、画像やPDFの数

表の3行目に当たる案件では、デザインとは別に「移行」の作業がまとまって発生します。1社が3行目を前提に見積もり、もう1社が2行目を前提に見積もっていれば、金額が違って当然です。見積もりを並べる前に、どの行を前提にしているかを各社に確かめると、差の理由を説明しやすくなります。

見積もり前に既存サイトを棚卸しする

旧サイトについて数えておくべきものは、ページのURL、記事、画像やPDFなどのファイル、フォーム、外部サービス、管理権限の6つです。件数が分かれば、制作会社が同じ量を前提に見積もれるようになります。

Googleは、URLが変わるサイト移転について、元のURLの一覧を作り、それぞれを新しいURLへ対応付ける作業を重要な項目として説明しています。一覧を作る際は、サイトマップ、アクセスの多いURL、CMSから出せるURLの一覧を使う方法を挙げ、画像や動画、PDFなどのファイルも移行の対象に含めるよう求めています(Google 検索セントラル「サイトを移転する方法」※)。

これを見積もり用に置き換えたのが次の棚卸し表です。

棚卸し項目数え方決めること用意する人
ページのURLサイトマップやCMSのページ一覧残す・まとめる・削除のどれにするか社内で一覧を出し、制作会社が確認する
ブログ・お知らせ・事例CMSの記事一覧で件数とカテゴリを数える全部移すか、期間を区切るか、移さないか社内
画像・PDF・動画ページから読み込んでいるファイルの数そのまま移すか、差し替えるか、削除するか社内と制作会社
フォーム問い合わせ・資料請求・採用などの種類入力項目、通知先、自動返信を引き継ぐか社内
外部サービス予約、地図、アクセス解析、広告のタグなど新しいサイトへ引き継ぐか社内と制作会社
管理権限ドメイン、サーバー、CMS、Search Consoleに誰が入れるか移行後に誰が管理するか社内

管理権限の行は見落とされがちです。Googleの同じ資料では、Search Consoleの所有権確認に使っているファイルやタグを新しいサイトにも含めるよう注意しています(Google 検索セントラル※)。誰がどの管理画面に入れるのかが分からないままだと、この作業を誰が担うのかも決まりません。

移行先のCMSによっては、既存サイトからの取り込み機能を用意しているものもあります。たとえばStudioは、公式ページでWordPressで運用していたサイトを取り込める機能を案内しています(Studio CMS※)。ただし、どの項目まで取り込めるか、画像や独自に追加した項目、URLがどう扱われるかは、案件ごとに確かめる必要があります。取り込み機能があることを「移行作業がない」と読み替えず、取り込んだ後の手直しが見積もりに入っているかを確認します。

移行費と制作費を分けて比較する

記事の移行とデザインの制作は、費用の決まり方が違います。デザインの制作は新しく作るページの型の数で決まり、移行は既存の件数と手作業の量で決まります。見積もりを比べる時は、この2つを別の行に分けます。

URLを変えるリニューアルでは、デザイン以外に次の作業が必要になります。Googleは、旧URLから新URLへのサーバー側での恒久的なリダイレクト(301や308の転送)、転送を何度も重ねないこと、サイト内のリンクを新しいURLへ書き換えること、新しいサイトマップの送信、移さないページで404や410のエラーを返すことを挙げています。転送はできれば1年以上残すこと、移転後は新旧のサイトの流入を見守ることも勧めています(Google 検索セントラル※)。

これらを見積書の行と照らし合わせるための表です。

作業数量の単位見積書で確かめること
新しいページのデザインと実装ページの型の数何種類の型を、何ページ分作るのか
記事の載せ替え記事の件数自動の取り込みか手作業か、体裁の手直しを含むか
画像・PDFの移行ファイルの数差し替えや容量の調整を含むか
本文中のリンクの書き換え記事内のリンクの数旧URLを新URLへ直す範囲
旧URLから新URLへの転送URLの件数対応表を誰が作り、誰が設定するか
移さないページの扱いURLの件数エラーで終わらせるか、まとめた先へ転送するか
転送とフォームの確認URLの件数とフォームの数公開後、いつまで何を確認するか

2社の見積もりをこの表の行に割り振ると、金額の差が制作の行から来ているのか、移行の行から来ているのかが分かります。行が空いている場合は、「含まれていない」のか「別の項目にまとめられている」のかを質問します。空欄のまま発注すると、公開の直前に追加の作業として出てくる可能性があります。

予算の組み方にも関わる点が2つあります。1つは、Googleがサイトの大きな変更の後に順位が一時的に変動しうること、中規模のサイトでも新しいURLへの置き換わりに数週間以上かかる場合があることを説明している点です。公開後の確認を1日で終わる作業として見積もらず、期間を決めておきます。もう1つは、ドメインの変更とCMSやレイアウトの変更を同時に行わず、1つずつ進めることを勧めている点です(Google 検索セントラル※)。一度にすべてを変える計画なら、その分の確認作業も見積もりに入っているかを確かめます。

削る費用と残すべき確認作業を区別する

予算を抑える時に後回しにできる作業と削らずに残す確認作業へ分かれる図
予算を抑える時に後回しにできる作業と削らずに残す確認作業へ分かれる図

予算を抑えたい時に後回しにできるのは、見た目の演出や新しい機能の追加です。一方、URLの転送とフォームの動作確認は削らずに残します。後者を省くと、公開した時点で検索やフォームからの問い合わせの流れが途切れるおそれがあるからです。

Googleは、サイト移転でよくある誤りとして、開発中に設定した検索除外(noindexやrobots.txtによるブロック)の外し忘れ、存在しないURLへの誤った転送、新しいURLに更新されていないサイトマップを挙げています(Google 検索セントラル※)。URLが変わる場合は旧URLから新URLへの転送設定を行うよう注意を促す記事もあります(ドメイン登録サービスの解説記事「WEB学園」)。

区分例判断の理由
後回しにできる動きのある演出、凝ったアニメーション公開後に追加しても、既存の流入や問い合わせは途切れない
後回しにできる会員機能や多言語対応などの新しい機能移行とは別の工事として、改めて見積もれる
後回しにできる全ページの一斉のデザイン刷新主要なページから段階的に進められる
残す旧URLから新URLへの転送と、その確認省くと、検索や外部のリンクから来た人が行き止まりになる
残す検索除外の解除とサイトマップの更新外し忘れると、新しいページが検索に載らないおそれがある
残すフォームの送信・通知・自動返信の確認省くと、問い合わせが届かないまま気付けない

「古い記事は移さない」と決めることも、費用を抑える方法の1つです。ただし、移さない記事も終わらせる作業は残ります。エラーを返すのか、内容の近い新しいページへ転送するのかを決め、その件数を見積もりに含めます。

予算相談には移行対象の一覧を添える

制作会社へ予算を伝える時は、金額だけでなく、現サイトのURL、棚卸しした件数、残す・移す・終わらせるの区分、公開後の確認と運用の担当を1つの依頼票にまとめて渡します。

発注前に自社の要件や条件をまとめた提案依頼書(RFP)を用意し、複数社から見積もりを取って比べることを勧める解説があります(ferret One)。EQUAL DESIGNが加えたいのは、その依頼書に「移行」と「確認」の欄を設けることです。

私たちは、Webサイトの動く部品を別の担当へ渡す時、画面見本を確認してから公開する手順を取っています。口頭の指示だけでは、制作物がどこまでできているのか、どこまで公開してよいのかが伝わらず、確認の前に本番へ出てしまう危険があるためです。リニューアルの依頼でも同じで、「何を移すか」と「どこまで確認したら公開してよいか」を書面で分けておくと、制作会社ごとの前提のずれを見つけやすくなると考えています。

次の依頼票は、初期費用・追加が発生する条件・継続費用を分けて書けるようにしたものです。数字は架空の記入例です。

欄記入例見積もりで分かれる費用
現サイトのURL自社サイトのトップページのURL―
残すページ12件(うちURLが変わるもの8件)初期費用
記事・お知らせ全80件のうち直近3年分を移す初期費用
画像・PDF製品資料のPDF20件は移す、古いカタログは削除初期費用
フォーム問い合わせと資料請求の2種類、通知先は2名初期費用
追加になる条件件数が一覧を超えた場合、原稿の差し替えが発生した場合追加が発生する条件
公開後の確認転送とフォームを確認する期間と担当初期費用または継続費用
運用月の更新の回数、CMSの利用料、サーバーとドメインの費用継続費用

依頼票を作る順番は次のとおりです。

  1. 現サイトのURLの一覧を出す
    • サイトマップやCMSのページ一覧から、ページと記事のURLを書き出す
    • アクセスの多いページには印を付けておく
  2. 残す・まとめる・終わらせるを決める
    • 1件ずつ区分を付け、URLが変わるものを数える
    • 終わらせるページは、エラーにするか転送するかも書く
  3. フォームと管理権限を書き出す
    • フォームごとの通知先と自動返信の有無を書く
    • ドメイン、サーバー、CMS、Search Consoleに誰が入れるかを確かめる
  4. 初期費用・追加の条件・継続費用を分けて見積もりを依頼する
    • 依頼票を各社に同じ形で渡す
    • 返ってきた見積もりを、移行費と制作費の照合表の行に割り振って比べる

一覧は完成していなくても構いません。件数が分からない欄が残っていれば、それ自体が制作会社に確認してもらう項目になります。

移行範囲が決まればリニューアル費用の差を説明できる

リニューアルの見積もりの差は、見た目だけでなく移行の範囲からも生まれます。社内で予算を説明する前に、次の3点を確かめておきます。

  • 自社の案件が、部分改修・URLを保つ作り直し・URLも変える作り直しのどれに当たるか
  • URL、記事、画像やPDF、フォーム、外部サービス、管理権限の件数
  • 見積もりの中で、制作の費用、移行の費用、追加が発生する条件、継続費用がそれぞれどの行に入っているか

EQUAL DESIGNでは、Webサイトの制作とデザインのご相談を受けています。現サイトのURLと、移したい記事や機能の一覧(途中まででも構いません)を添えてご相談いただければ、リニューアルの範囲と見積もりを一緒に整理します。ご相談はEQUAL DESIGNの公式サイトからお寄せください。